日時 | 1999年05月09日(第58回例会) |
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場所 | 立教大学 |
テーマ | 『株主総会』(奥村宏著),第3,4章 |
今回は『株主総会』の後半部分について,検討を加えた。
第3章については,報告者から次のような問題が提出された。──奥村の論述の筋道は非常に解りにくいが,それは奥村が次の3点について,理論的に区別されなければならない2つの問題を混在させ,同時に論じてしまっているからである。すなわち,(1)“株式会社の主権者は誰か”という問題においては対立項をなすのは株主と経営者とであるのに対して,“株主は誰か”という問題においては対立項をなすのは法人株主と個人株主とであるから,この二つの問題は区別されなければならない。(2)株式の分散・集中という問題においては対立項をなすのは大株主と小株主とであるのに対して,株式所有の主体という問題において対立項をなすのは法人株主と自然人としての株主とであるから,この二つの問題は区別されなければならない。(3)会社の支配という問題についても,会社の現実的過程に対して行う支配と単なるチェックとは区別されなければならない。
第4章については,報告者から互いに関連し合う次のような問題が提出された。──(1)結局のところ奥村の展望は株主総会の活性化にあるのか,それとも大規模株式会社の解体にあるのか。(2)奥村がこの第4章を書いた理由は,異常な日本資本主義を正常な資本主義に近付けるということにあるのか,それとも株式会社一般の危機を説くということにあるのか。(3)奥村の立脚点は株主としての私的所有者の立場にあるのか,それとも民主主義の立場にあるのか。
株式会社論を奥村は理論的に考察しているわけではない。そこで,理論的に考察する場合に必要になる基準──そのどちらをとるのかで結論が全く異なってしまうような選択肢──が参加者によって整理された。