本文

 神山さん,ISM研究会の皆さん,今井です。東京近郊に住んでいらっしゃる
方は,遂に今日(1999/07/21),空から恐怖の大王が降ってきたと確信したこ
とでしょう。俺も禊をして,臨兵闘者皆陣列在前と唱えていました。おかげで
なんとか露命を繋ぐことができたようです。

 神山さん,お忙しい中,ism-studyの方に長文のコメントをアップしていた
だき,誠にありがとうございます。本当はごくごく簡単なコメントをアップし
て頂ければいいと思っていたのですが,期待を大きく上回る包括的なコメント
で,感謝しています。それでは,ism-studyの方を始めましょう。

 ちょっと,最初に,俺の方からも,言いたいことをこのism-topicsの方で述
べておきます。──

          **************************************************

 果たしてメーリングリストで批判的理論の共同研究をすることができるのか
どうか,正直に言って俺には判りません。メーリングリストを通じて共同研究
をしているという話はちらほら聞きますが,成功しているという話は聞いたこ
とがありません[*1]。ビジネスやエロの分野では,既に成功しているメーリン
グリストがいくつもあるそうです。けれども,研究の分野では,この便利な武
器をまだ持て余してしまっているのが現状でしょう。

[*1]尤も,そもそも共同研究自体,成功しているという
話は,社会科学の分野ではあまり聞きませんが。メーリ
ングリストを使わずに国民の税金(科研費)で温泉宿に
行こうと,共同研究なんてのはなかなか成功しにくいと
いうのが現状だと思います。しかも,特に批判的理論で
は,共同“研究”なんて全くないのではないでしょう
か。

 けれども,現状の学術体制──(1)各大学が教育機関としてはともかく,共
同研究機関としては完全に無力であるということを露呈している;(2)そもそ
も批判的理論の研究者の人数が減少している以上,大学とか地方とかそういう
空間的に限定されたレベルでは,共同研究が不可能になりつつある──を前提
する限り,将来的には,このやり方でしか,批判的理論の共同研究は不可能に
なっていくと思います。ですから,将来的なことを言うと,もしメーリングリ
スト(及びその他のテクノロジー)を利用して共同研究ができないのであれ
ば,もう今後は共同研究なんて不可能になると,俺は考えています。“えらく
短絡的な考えであり,極論だ”と思われる方もいらっしゃるかもしれません
が,俺としては,現在の学術・教育・研究体制のもとで,それ以外のいかなる
展望をも持つことができません。

 この試みは失敗に終わるかもしれません。失敗にもいろいろな種類がありま
す。ですが,失敗からノウハウを引き出して各参加者の中に蓄積することがで
きるような,有意義な失敗に終わりたいと考えています。

          **************************************************

 こういうわけで,皆さんのご協力を心からお願いいたします。例会に出席し
た方も,例会に出席することができなかった方も,是非とも積極的に投稿して
ください。

 普段なかなか例会に出てこれない方へ。──繰り返しになりますが,会員
が,あるいは各地に散らばってしまって,あるいはいろいろと忙しくて,なか
なか例会に出てこれないという状況のもとで,時間と空間とを相対化してバー
チャルな研究会を持とうというのが,ism-studyのそもそもの主旨です。です
から,普段はなかなか例会に出てこれない方が積極的に発言してくださると,
このメーリングリストは成功したことになります。(もちろん,例会に出席さ
れた方の発言も大歓迎です)。どうか宜しくお願いいたします。

 テキストである『株主総会』(奥村宏)を読んでいらっしゃらない方,ある
いはまたそもそも『株主総会』を持っていらっしゃらない方へ。──大丈夫,
大丈夫,全然オッケーです。なに,テキストの大体の内容なんてもんは,ISM 
HP上に公開されているレジュメをご覧になれば,あらかた解りになるはずで
す。それに,問題は現代社会批判であって,奥村宏批判ではありません。奥村
さんのテキストをこの研究会で取り挙げたのも,あくまでも現代資本主義批判
の手掛かりにするために過ぎません。ですから,テキストを読んでいないから
と言って,あるいはテキストを持っていないからと言って,どうか気後れしな
いでください。

          **************************************************

 今日のエモーショナルな言の葉……

その夜おれと山嵐は
    この不浄な地を離れた。

『坊っちゃん』,夏目漱石

──「不浄な地」には坊ちゃん饅頭なるものがあります(赤間さん,ごちそう
さまでした)。坊っちゃん(江戸),山嵐(会津)が赤シャツと野だに,従っ
て明治の薩長政府に,それ故に日本の近代に,だからまた資本主義というもの
に勝てなかったように,所詮,漱石も資本主義には勝てません。漱石はよく解
っていたのですね。